スイス式競技会
参加者全員が同一回戦数を対局し、全員の順位を決する対戦方式。
1948年、スイスの一クラブWeekend例会で行われ、(10人程度が5回戦(金土日))世界に広まった。その後、レイティング制度とリンクすることで色々なシステムが開発された。FIDE及びJCAは標準的な制度を定め単にスイス式という時はこの標準に従う。
トーナメントによっては特別な変形が使われるが、その場合標準との相違点を第一局開始前に参加者全員に黒板に発表、貼紙、説明書配布などで、告知しなければならない。この告知を怠りクレームを受けた場合、或いはトラブルが起きた場合、トーナメントは失敗で、トラブルをおこした者に責任は生じない。
標準との変形はいづれも次の要件は充たさねばならない。

 1.決定
 2.組み分け
 3.参加人数、回戦数
 4.原則
 5.順接式
 6.色決定(FIDE方式),
 7.A式、B式
 8.同点分離法(タイ・ブレーク)
 9.アービター
10.Z式(JCA方式)
11.全国大会


1、決定

全ての回戦の組み合わせは発表された通り第一局開始前にプログラムされており、第一局開始後は何びとの恣意と入れてはならない。プログラムに欠陥がなければどの様な場合にも必ず理論的なかつ一意的な解決があるもので(誰が組合わせをしても同じ結果)、変形システムを導入する時は充分この点に留意しなければならない。スイス式のアービターは馴れないうちは忠実に標準システムに従うことが望ましい。

2、組分け

スイス式では基本的に同一得点のものをほぼ等しい棋力(現トーナメントでの)と見なすことが特徴であり、理想的には全参加者のレイティング差が200点以内参加者と回戦数が充分の場合400点以内である。回戦数と参加者の少ない場合どの様なシステムを採っても思わしくない結果を生ずる可能性は高い。回戦数を節約するにはレイティングによる組み合わせハンディ法がある。これは一つのトーナメントを実質的に2分する方法で、諸種の方法があるが次の一つを紹介する。
1.
簡易のハンデキャップ(JCA)
全参加者をレイテリングによりA、B2組に分け、Aに組合わせハンディキャップ+1点を加える。この+1は成績には加えない。

3、参加人数、回戦数

スイス式の特長は参加人数が柔軟で、勝ち抜き戦や総当り戦のように参加者数を確定する必要がないことである。途中参加者や棄権者があってもトーナメントの興味は失われず完成する。しかし、回戦数を設定するために参加者数の予想を立てることは重要である。参加者15人を超えるのに4回戦というのは意味をなさない。
なお3回戦以下のトーナメントはスイス式とはいえない。5回戦8〜12人、7回戦30〜50人、(持ち色の偏りをきにしなければ6回戦13〜30人)は理想的に優勝者を選出できる。2位を決めるには2回戦ずつ追加が理想的である。
全国大会13回戦は参加者30〜40人の中から4位までを選出するに必要な回戦数で参加者100人迄耐えられる。(レイティングにばらつきがなければ500人!)

4、原則

1. 各局終了後、全員を勝点ごとに”群”に分ける。
得点の高い群を上位におき各群ごとにレイティング上位者をその中の上位におく。
組合わせは上位者から順に行う。
組合わせ法には順接、逆説、隣接、間接とあるが、ここでは順接を説明する。

2. 同一相手とは2度当たらない。

3. 各組合わせに当たっては同一郡内の(残りの)組み合わせ数を最大にする様、留意する。これに反する場合は既に予定した組み合わせを最後のものからキャンセル。(これには経験が必要です。)

4. 持ち色決定は組合わせ決定後、各組単位で行う。(JCA)FIDEは組合わせ決定時に色を配慮し相手を替えるが(同勝点同棋力の原理)レイティングにばらつきのあるJCAでは持ち色より「誰か」が重要であり、相手の交換は逆に不合理を生ずる。各国それぞれ別のシステムが許容される理由はここにある。

5. スイス式は原則3さえ守られれば、(1、2は無視してもよい!)途中どの様な順序で組合わせても参加者2n人の場合2n−1回戦まで必ず可能で、最後は総当りとなる。(但し、総当りの組合わせはFIDEが別に定めた標準を使う。)

6. 第一局は全員の組合わせ後、全員同時に開始全局が終了後、結果に従い第2局の組合わせをアービターが決定発表する。第2局も同時に開始する。(第2局以下同じ)組合わせに当っては勝点を通算し、群に分ける。

5、順接式

1. 同一群の参加者をレイティング順に親子二組に分け、次のように組合わせる。(基本)
(1) 1―――5
    2―――6
    3―――7
    4―――8

2. 1−5が組合わせ不能のとき、子を最低限に交換する。
(2) 1―――6      更に(3) 1―――6
    2―――5            2―――7
    3―――7            3―――5
    4―――8            4―――8

3. 親と子の組合わせが全て不能のとき親の最下位と子の最上位を入れ替え以上の操作をする。
その場合は類推してください。
    1―――4
    2―――6
    3―――7
    5―――8


4. 親子を無視した組合わせによっても、最後の二人が残る時、親の最下位と子の最上位その二人は浮動体となり、下の郡の最上位に移る。

5. 群が奇数のときは浮動体として親子の中位者におき、親の最下位としてあつかい、その群の組合わせに使われなかった時は浮動体として、次の群の最上位に移る。

6. 組合わせが勝点中位群に至った時、組合わせ順を逆転させ、最下位群から行い、最後に中位群で調節することができる。この場合中位群との組合わせをジャンプして上位浮動体と下位浮動体が直接組合わせられない様に留意する。

7. 全員の組合わせが完了となったときその回戦の組合わせは確定する。

6、色決定(FIDE方式)

1. 色決定は各組互ごとに行う。

2. 持ち色に偏りが生じても相手を変えない。

3. 持ち色は出来る限り各人ごとに
1. 白黒同数とする。
双方のバランスが悪い時は偏りの差の多い方を調節優位とする。
2. 出来る限り白黒(黒白)前回の交替とする。双方の偏りが同じで前回の色が同じであった時は前回の回の色の逆とする。以下同様に逆上る。色歴史が全く同じ時は各組ごとに推選で決める。

4. 第一局の特色は一番ボードを対局する二人または、1番2番ボードの各上位者同士の握り中、奇数番のボードの上位者の白黒を決める。偶数番ボードは逆。

5. 偶数回戦数のときは持ち色が極端に偏る参加者ができることがあるが止むを得ない。得に優勝候補の間でこの問題が出ると不満を生じるが、考えて見れば問題を生ずるのは対戦するそれまでの色偏差は双方同じ条件であり、運不運は最後の一局だけである。

7.A式、B式

1. スイス式は単純のようで実際に組合わせに当って見ると意外に難しく経験が必要である。
FIDEではA式(LIM式簡易法)とB式(ハイセン式)の二つが標準とされている。A式は論理性に欠け、矛盾を生じることが多いが、コンピュータ以前には多く利用されていた。(知らず知らずにアービターの恣意が入る…フィージィブル(feasible)な解法で、慣れたアービターの”自然”な恣意にはクレームはほとんど生じない。)LIM式は現在はほとんど捨てられている。B式は”数学的”すぎて適確に活用できる人はFIDEでも数人しかいない。一般には不人気である。結局、各競技会ごとにシステムを定めている。

2. スイス式はいずれのシステムにしても人間のためのプログラムは完結している。しかし、コンピュータプログラム化となるとアルゴリズムの記述が難しく、単純なシステムでさえ完全なものがない。
人間がフィージィブルな恣意で誤魔化してしまうところはコンピュータは”とんでもない”(結局はそれが正しいことが多い)組み合わせが出現し、誰も納得しない。

3. スイス式にも欠陥がある。スイス式ギャンビットなんていう戦法?が生まれたのはその一つ。FIDEでは最近は格調の高いトーナメントはスイス式離れである。

4. スイス式は米国のような大衆トーナメントで威力を発揮する。

5. 欧米では囲碁のトーナメントは全部スイス式。最後まで全員が全局を堪能できるのが魅力だ。囲碁の場合引き分けがほとんどない(将棋も同じ)のでスイス式ははるかに簡単。回戦数も極めて少なく優勝者が決まる。16人4回戦32人5回戦124人7回戦。しかし、番くるわせ優勝を避けるため、通常必要回戦数+2局が適切。スイス式は囲碁将棋にピッタリなのでお勧めする。少なくとも第2局以降、各回全員同時対局開始がコツで終わった順に組合わせを決める方式ではスイス式は成立しない。レイティング制度はなくても同一群内すべて抽選でよい。

(2001.2.1. 松本康司 IA FIDE技術審議会座長(ルール委、スイス式委))

8、同点分離法(タイ・ブレーク)

1. 優勝賞金は同点者で当分に分ける。2位以下同じ。

2. スイス式において同点者に順位をつける場合、「簡易パフォーマンス法」奨める。
1. 自分のレイティングを対戦者全員のレイティングを合計し合計の多いものを上位とする。不戦局については自分のレイティングを不戦局分加える。
2. 他に
ソルコフ 対戦相手の得点合計
ソルコフ中取 対戦相手の最上位を外す。
直接比較 本人同士の結果
その他いろいろあるが、いずれのシステムを採用するかは第一局開始時に発表していなければならない。怠った場合は同点分離なしで作表は抽選。

3.  スイス式による順位は入賞者(全国大会の場合は8位くらい)以下の順位は確率が低い。但し、勝ち越しと負け越しの間の成績は圧倒的なもので対戦者歴も全く違う。対戦していない順位上位者が下位者に必ず勝つという仮定のもとに終了後の星取表を埋めてみると全員のほぼ確実な棋力の位置が分かるから、分析に使うとよい。

9.アービター

1.  アービターはギロチン制のときの各局時間中止時周辺の局勢判定のため、「ブック・ドロー」の知識とツークツワンク技術、永久手の判断等に修練が必要である。特に「ブック・ドロー」に関して絶えず学習を続けなければならない。

2.  IA(International Arbiter)、NA(National Arbiter)の競技中の決定は罰則権も含み最終である。(同一相手が2度目に発表された時を除く。その他の場合はNAに明らかなミスがあって発表されたものは訂正されない。IA、NA以外のアービター資格者の裁定、決定の異議は一時間以内に主審がいる時は主審に、その他の場合は主催者に書面で行う。結果あるいは次局調整を行うかは、競技会の進行予定に合わせ運営者が決定して一旦競技会を完了させる。提訴者に不満がある時は、更に一週間以内に書面で利害関係を持つ本人がルール委員会に提訴する。アービターに失責があるとされた場合は結果の訂正、アービターの降格がある場合がある。却下の場合は提訴供託金が没収される。

10、Z式(JCA)


 上下900点差のある全国大会を効果的に処理するハンディキャップ法。全国大会13局を前半6局と中間5局後半6局で実際の決定戦、前半では事実上の予選(新鋭発掘)を行う。
 全員をA、Bに分け別々の3回戦を行う。(理論的4回戦が望ましいが心理的に限界)次の3回戦ではAの上位半分はスイス式を続行。Aの残りは成績上位順にB位の成績上位者と上から組合わせる。第5局はA組の0.5のハンディをつけて全員一組のスイス式。残りの6局は全員ハンディなしのスイス式で仕上げる。

11、全国大会

 全国大会は、ここ20年、非常にグレードの高い国際的にも第一組のトーナメントであり、日本のチェスのショーケースで、全日本のレイティング熱心な愛好者の参加希望の的である。
 ゴールデンウィークの7日間チェスに没入出来るのは大変光栄だ。海外では通常2週間が多かったトーナメントも10〜7日に集約して来た。ただし、全国大会のレベルは国際的に3段階以上低い。オリンピック男子ベストメンバー88位が如実に示す。日本のホープ渡辺6段が2375、我が国の属する【3、2ゾーン】の東南アジアは世界の弱小ゾーンだ。しかし各国トップに2500はザラザラ、2600も少なくない。人口400万人のシンガポールやマレーシアでさえトップは2500だ。だから日本に渡辺がいるということはアジアでさえ評判になっていない。最近、羽生がUSレイティングで2350と評価されたいうがUSレイティングはFIDE/JCAと比べて200点ほどインフレだという。将棋界でのチェスプレーヤーとしての羽生の売り出しは将棋ファン相手の独特のものであってチェス界のものではない。US2350では羽生人気は生じない。羽生さんはJCAの会員だ。世界の羽生を誕生させるには、ヨーロッパのトーナメントでFIDEレイティングの実績を残し、IM(International Master)にチャレンジすることだ。羽生さんの才能と抜群の研究熱心からするとヨーロッパを転々とし集中すれば1年でIM、3年でGM(Grand Master)は可能だ。GMになれば羽生さんの望み通りカスパロフともアナンドとも対決可能です。その時は羽生vsカスパロフ、羽生vsアナンドマッチに日本からすぐに5億10億のプライズが提供されるでしょう。ジュニアの皆さん、あなたにも羽生さんと同じチャンスはそっくりそのままあるのですよ。全国大会とジャパンリーグはFIDE公式戦です。
 優勝候補に2550位が2〜3人、シード選手が200点差で50〜150名各県代表各1名(成績により枠は増加)。全国大会がこの様な規模になればスポンサーが必ずつきます。優勝が2300台のうちはスポンサーの眼中には入りません。優勝候補が15歳未満ならベストの条件です。
 日本のチェス、皆の力でその様に育てましょう。
 海外のチェスプレーヤーはプロは当然アマチュアでもほとんど会員が次の競技会を目標として日常の研究を怠りません。日本の囲碁将棋のアマチュアにはごく少人数の上位者を除いてその習慣がない。それが日本チェスに影響しているようです。チェスと将棋は全く違うのです。囲碁将棋は優勝者、優勝候補だけに意味があり、チェスではスイス式で全員が最後まで戦うため全員にレイティング向上の目的があり、日頃の習練の意欲がでるのです。向上の意欲が違います。世界のチェス競技熱心者の中に”チェスを遊びでやっている”という人は一人もいないでしょう。レイティングリンクスイス式のこれが最大の点です。
 チェスは遊びだという信念に固まり、専ら友人家族と気軽に楽しむチェスも文句なく楽しい娯楽の人生の一時です。だからどんなチェスでも多いに推奨します。でも一度大勢の仲間の参加するスイス式大会に一度参加してみてください。最初は全敗を恥ずかしがらないで!何か”素晴らしい仲間”を見たような気がするでしょう。そしてあなたも競技チェスにきっと興味を引かれます。